事例・技術情報
2024.04.25
検査機器の原理
X線異物検査装置の原理
#X線異物検査装置
X線とは
X線は、電波や光と同じ電磁波の一種ですが、波長が極めて短いため、物質を透過することができます。
日常的に感じる光の波長は400nm~800nm程度ですが、X線の波長は0.01nm~1nmと短く、これが物質透過性の高い理由です。
X線と放射能の違い
X線異物検査装置を使用していない方の中には、X線と放射能を混同し、健康被害を心配される方もいらっしゃるかもしれません。しかし、X線は放射能とは異なり、以下の点で安全性の高い技術です。
- 放射線発生源
X線は高速電子を金属ターゲットに衝突させることで発生しますが、放射性物質の自然崩壊過程で発生するγ線とは異なり、放射性物質自体を使用しません。 - 放射線の種類
X線は電磁波の一種であり、中性子線やγ線などの放射線とは異なり、人体への影響が比較的少ないと言われています。 - 照射時間
X線検査装置は、検査実行時のみX線を発生させる構造となっており、検査後は放射線を停止するため、残留被曝の心配がありません。
放射線 | 発生源 | 放射能 |
X線 | 高速の電子を金属へ衝突 | 無 |
γ線 | 放射性物質の自然崩壊過程 | 有 |
中性子線 | 核分裂 | 有 |
X線異物検査装置の構造
X線異物検査装置は、X線発生装置からライン状に被検査物にX線を照射し、ラインセンサで透過したX線量を検知することで、被検査物の内部構造や異物を可視化するX線画像を生成します。生成された画像をコンピュータで解析し、良品か異物混入品かを判断し、操作部に表示します。
主要部品
- X線発生装置
高速電子を金属ターゲットに衝突させてX線を発生させる装置 - ラインセンサ
X線を透過した情報を電気信号に変換するセンサー
- コンピュータ
電気信号を基にX線画像を生成し、異物を検出する装置 - 操作部
検査結果や設定などを表示する装置
X線異物検査装置で検出可能なもの
X線は、物質の密度が高いほど透過しにくくなります。そのため、鉄やステンレスなどの高密度な物質は検出しやすく、樹脂やゴムなどの低密度な物質は検出しにくくなります。
金属検出機との違い
- 金属検出機: 金属のみを検出します。鉄、ステンレス、アルミニウム、銅など、様々な種類の金属に対応しています。
- X線異物検査装置: 金属だけでなく、非金属(プラスチック、ガラス、石など)も検出できます。
物質 | 密度 (g/cm3) |
金属検出機 |
X線異物検査装置 |
鉄 | 7.87 | ◎ | ◎ |
ステンレス | 7.93 | 〇 | 〇 |
石 | 4.0 | × | 〇 |
ガラス | 2.5 | × | 〇 |
硬骨 | 2.0 | × | △ |
高密度樹脂 |
2.2 | × | △ |
ゴム |
1.3 | × | △ |
低密度樹脂 |
1.1 | × | × |
虫・毛髪 |
‐ | × | × |
X線装置使用における法規制と安全対策
準拠すべき法規制
X線装置を使用する際には、以下の法規制を遵守する必要があります。
- 電離放射線障害防止規則
- 労働安全衛生規則
- 労働安全衛生法
- 労働安全衛生法施行例
電離放射線障害防止規則における管理区域
電離放射線障害防止規則では、放射線を使用する作業エリアを「管理区域」と「非管理区域」に区分しています。
「管理区域」は、3ヶ月間に1.3mSvを超える放射線を発生させる区域と定義されています。この区域内では、以下の事項が義務付けられています。
- 有資格者による管理
- 法令に基づく管理及び報告
週40時間労働に基づき1時間あたりに換算すると、1300μSv/(40時間×13週)= 2.5μSv/時間となりますが、当社のX線異物検査装置のX線漏洩量の基準は1μSv/時間以下であり、管理区域とする必要はありません。
食品検査物に対する安全性
食品衛生法に基づき、食品の製造工程または加工工程において、食品の吸収線量が0.1グレイ以下の場合、放射線照射が認められています。当社では、この法令を遵守し、安全性の高い食品検査を実現しています。
- 機器設計・製造
当社は、食品への放射線照射量が0.1グレイ以下となるよう、検査機器を設計・製造しています。 - X線照射の制御
X線照射中に検査物が滞留した場合でも、自動的にX線を停止する仕組みを導入しています。これにより、食品への照射量を常に0.1グレイ以下に抑えています。
当社は、食品検査における安全性確保を最優先に考え、今後も法令遵守と技術革新を継続し、より安全で信頼性の高い製品を提供してまいります。